「理念を持ち、信念に生きよ」
と言ったのは、かの織田信長なのだそうです。
理想を持ち、信念に生きろ。
理想や信念を見失った者は、戦う前から負けている。
そのような者は廃人と同じである。
という事なのだそうな。
「鳴かぬなら 殺してしまえ 不如帰」
だけじゃないんですね(笑)
そんな信長公に倣っている訳ではありませんが、僕もブランドデザインの時にはこの
理念や信念
を非常に重視します。
理念や信念は、デザインの根本に据えるべき土台となるものであり、ブランドを構築する上で背中を押してくれる力となるものです。
って別に、僕が言うまでも無く、多くの人が理念や信念の重要性は意識していますよね。
「経営理念」とか「ミッション」とかあるくらいですし、それを掲げている企業も数多くあるくらいですし。
でも、この「理念」や「ミッション」というもの。
これを掲げたからこそ、おかしくなってしまう。
そういう場合もあるんです。
後押ししてくれるはずの「理念」や「ミッション」が、足を引っ張ってしまう…
実際にそういう企業は少なくありません。
今日はその原因と対策について考えてみようと思います。
理念が足を引っ張る時1:行動とのズレ
一番多いパターンがこれです。
ひとことで言うならば、
理念を具体的な行動に落とし込めていない
という事。
「お客様第一」とか言ってるくせに、お客様をぞんざいに扱っている、みたいな事です。
まあ、ここまで分かりやすくなくても、多くの企業やお店はこういった事をやってしまっています。
理念とはただの文字ではありません。
行動するための指針であるべきものなのです。
いくらご立派な文言を掲げていたとしても、それだけでは意味がありません。
絵に描いた餅だけでは何も変わらないのです。
…という事は、改めて僕に言われなくても多くの人は理解しているはず。
なのになぜ、理念を行動に移せていないのか?
そこにはこんな理由があると僕は考えています。
理念が足を引っ張る時2:理解不足
なぜ理念を行動に移せないのか?
その最も大きな要因は
理念をきちんと理解出来ていないから
だというのが僕の考えです。
例えば、上で例に出した
「お客様第一」
これ、具体的に何をどうすればいいのでしょうか?
…と言っても、絶対的な回答があるはずがありません。
業種
規模
顧客層
提供側の背景
…
色々な要素によって、同じ
「お客様第一」
という言葉でも意味は変わってくるからです。
どんな時に、
どんな人に、
どんな事を、
どのように行えば、
「お客様第一」
と言えるのか?
そういった事を考えずにただ「お客様第一」と叫ぶのは、
「仏作って魂入れず」
ではないですが、何の意味も無いと思うのです。
ちょっと話は逸れますが、このように言葉を雑に使うと、大体の場合、商売が、そして人生そのものが雑になる傾向にあります。
僕は過去にシステムのサポートやカウンセラーやメンタルトレーナー、起業スクール講師として3000人くらいの人の話を伺ってきましたが、上手くいっていないと悩んでいる人のほとんどは
言葉
というものを雑に使っていました。
驚く事に多くの人は
「自分が何で困っているのか?」
「どうなればいいのか?」
という事が分からないまま、悩んでいました。
言葉を雑に使っている、
つまり、思考が雑になっている。
そんな状態では悩みが解決出来る訳がありません。
でも驚く事に、非常に多くの人がそうなんです。
インド人もビックリです。
理念が行動に移せないのもの同じ事。
思考と言葉が雑だから、理念が具体的に何を指しているのかをきちんと理解出来ない。
そもそも理念を作ったはずの経営者の方ですら、こういう人が少なくありません。
であれば、そこで働いている人達も同じ状況に陥ります。
そして、社員やスタッフがバラバラな事をしてしまう。
…
その先には、絵に描いたような惨劇があなたを待っています(汗)
でも、なぜそんな惨劇が起こってしまうのでしょうか?
なぜ理解出来ないのでしょうか?
理念が足を引っ張る時3:思考停止
理念を理解出来ない。
その最も大きな要因が
「きちんと考えずに決めてしまった」という事
つまり、
思考停止
に他なりません。
「理念」とは、その人自身の今までの全人生、心の奥底にあるもの、それを言葉にしたものです。
なのに、多くの人が特に考えもせず、浅いフィーリングで決めてしまう。
「お客様第一」
とか
「おもてなし」
とか。
その辺に転がっているようなものを、理念にしてしまう。
そんなもので、明確な行動に移せる訳が無いんですよ。
自分の内から湧き出るもの。
自分の理想や問題意識。
そういったものを吟味して産み出すもの。
それが僕の考える理念というものです。
うっすらふんわりした感覚を「インスピレーション」とか言われても、インスピレーション自身も困っちゃうんです。
惨劇の事例:とあるカフェの受難
そんな風にきちんと考えずに理念を建ててしまった、とあるお店が実際にあります。
とあるお店、僕が何回か行った事のあるカフェの話です。
そこのお店では
「心をこめたおもてなし」
という理念を掲げていました。
(メニューに書いてました)
まあ、悪いお店ではなかったです。
食べ物も飲み物も店構えも結構こだわっているし。
(ちなみに、そこそこ単価の高いお店でしたが)
カレーが結構美味しくて(僕はカレー星人なので)結構好きな店だったんです。
ただ、ちょっと気になる事がありました。
それは、スタッフの接客のレベルに、明らかな差があるという事。
ひどい人は、「当店イチオシメニュー」の内容の説明も出来ないくらいでしたから(ちなみに新人さんではありません)
面白かったので何度か通って、スタッフとも顔馴染みになってから、こんな質問をしてみました。
「ねえ、このお店は『心をこめたおもてなし』を理念にしているけど、具体的にどんな事をするの?」
「そもそも『おもてなし』って何なの?」
我ながら嫌な客だと思います(笑)
そんな嫌な客っぷりを何人かのスタッフに炸裂させてみたところ、案の定、僕の思った通りの状況でした。
もうあなたも分かりますよね?
そうです。
スタッフの「心をこめたおもてなし」という理念に対する理解が、スタッフごとに全く違っていたという事です。
つまり、そのカフェのオーナーが、きちんと共有していなかったという事ですね。
そのお店は結局、一時期は売上を伸ばした(と言ってもメニューのひとつが当時のブームに乗っただけなんですが…)ものの、ブームが去った後は、うん、まあ、絵に描いたような状態です(苦笑)
とは言え、そこは某コンサルタントが入っており「理念」というものや「ブランド」というものへの意識が高いお店でした。
理念に対する研修等もしていたし、ブランド構築やマーケティングへの意識もあった。
でもそんなお店でも、そのレベルだったんです。
「理念」というものを浅いレベルでしか捉えられず、浅いレベルでしか形に出来ていなかったのです。
(まあ正確には、その某コンサルタントがそういう教えをしていた、というのが事実なんでしょうけどね…)
で、ここからまた面白いのですが、一度だけそのオーナーさんとご飯を食べた事があるんです。
その時のオーナーさんの言葉が、もう本当に絵に描いたようなもので。
まあ言葉だから絵には描けないんですけど、まあそこにツッコまないでいただくとして、彼は何て言ったと思います?
彼が僕に言った事、それは
「スタッフが思うように成長してくれないんですよね。
ウチの『心をこめたおもてなし』という理念を、きちんと理解してるのかなあ?」
僕がその時思った事、それは
「え?本気?(驚)」
本当に驚きました。
僕に言わせれば
「スタッフが成長していない事そのものが、あなたの思う通り」
なのですから。
「心をこめたおもてなし」という理念の意味をトップの側の人間がきちんと共有せず、ただただ「理念」という言葉を押し付ける。
そりゃあ、「理念が理解されない」のも当然です。
なのに、本人が気付いていない。
まあ、それでも売上が上がっているのは凄いなー、と遠い目をしながら思ったのも今ではいい思い出です。
誰のための人生なの?
マザーテレサではありませんが、
雑に考え、雑に感じるから言葉遣いが雑になる
雑な言葉を使うから行動が雑になる
そして、雑な行動をするから、雑な結果が、望んでいない結果がやってくるのです。
この「雑な人生」の流れを断ち切るためには
しっかり考え、しっかり感じる。
ここがスタートです。
あなたは何をしたいのですか?
誰のために、何をしたいのですか?
それは何故ですか?
是非一度、しっかり考えてみて欲しいのです。
しっかり感じてみて欲しいのです。
あなたの人生は、誰のための人生なのでしょうか?
もちろん、あなたのためですよね?
あなたにとっての楽しい人生、それはどんなものでしょうか?
是非一度、考えてみて欲しいのです。
それがあなたのブランドの第一歩です。
阿部 龍太
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