「ポジティブ思考は大切だ」
こんな事がよく言われています。
確かにポジティブな思考は、現状を打破し、新たな変化、新たな価値、イノベーションを生み出す土台となる、非情に重要なものです。
ただ個人的に、ひとつ気になる事があるのです。
それは、どうも少なからずの人が
この「ポジティブ思考」というものを「誤解」している
という点。
つまり
「間違ったポジティブ思考」という「ある種のネガティブ思考」
に縛られており、
「真のポジティブ思考」
というものを実は理解できていないという事です。
そうなると、望む成果を得られなかったり、得られたとしても大きな代償を支払う羽目になりかねません。
ではその「真のポジティブ思考」とは何なのか?
今日はその事について僕の考えをお伝えしようと思います。
「ポジティブ思考」が持つ「二つの意味」
「間違ったポジティブ思考」を一言で表現するならば
物事を「善」と「悪」のふたつに分け、自分にとっての「善」だけを見て自分にとっての「悪」を無視するという「善悪二元論」的な思考。
というものです。
(そもそも論として「何かを悪と認識する」つまり「●●はいけないものだ」とする時点で、それは「ポジティブな思考」と呼べるものなのか個人的には疑問なのですが…)
そして「真のポジティブ思考」を一言で表現するならば
自分にとっての善も悪もすべてを受け容れ、己の望むものを得るための糧にする思考。
というものです。
この「真のポジティブ思考」を表す、素晴らしい名言がありますのでご紹介しましょう。
是非とも姿勢を正してお読みください(笑)
受けた「傷」も我が肉体!
今までの「ダメージ」も我が能力!
全てを利用して…勝利を掴むッ!
(ワムウ:『ジョジョの奇妙な冒険 第二部』)
このワムウというキャラクター、主人公(ジョセフ・ジョースター)との戦闘で重傷を負ってしまいます。
しかし、その傷を活用する事で一発逆転!
逆に主人公を絶体絶命のピンチに追い込みます。
上記の引用はその時のセリフです。
コーチングの世界に「リソース」という概念があります。
「リソース」とは「資源」、つまり「己が持っているもの」を指します。
ざっくり言うならば
「自分が持っている資源を活かす事で、あなたの望むものが近づいてきますよ」
という概念です。
そしてこの「リソース」は、一見ポジティブなものだけに限りません。
失敗体験のような一見ネガティブなものであっても、望むものを得るための立派なリソースになるのです。
ワムウはまさに、自分の「リソース」を最大限に活用したのだと言えるでしょう。
漫画だけではなく現実世界でも、
・イビチャ・オシム
(元ジェフユナイテッド市原・千葉監督、元サッカー日本代表監督)
・エディー・ジョーンズ
(元ラグビー日本代表HC)
といった稀代の名将たちも
「日本人の持つ、日本人らしさを活用して勝利する」
という「日本流(ジャパン・ウェイ)を突き詰める指導」をし、成果を出しています。
(もし、オシムさんが体調を崩さなかったら…とついつい思ってしまう人は僕だけではないはずです)
背が低い、スピードやパワーやバネといった身体能力が低い。
彼らはそんな要素を選手個々人の成長に、そしてチームの勝利に繋げていきました。
ラグビー日本代表が南アを破った「ブライトンの奇跡」などは、まさに「日本流」の素晴らしさを示すものと言えるのではないでしょうか。
一見ネガティブなものであっても(もちろん一見ポジティブなものも含めて)、全てを自分の力、自分のリソースとして「自分が得たいもの」につながるよう活用する。
それこそが「真のポジティブ思考」というものなのです。
そして前回お伝えした
にも、この「真のポジティブ思考」が応用できます。
前回、好きな事を見つけるために
「好きなもの」
そして
「その理由」
を挙げるという話をしました。
実はこの
「真のポジティブ思考」
を活用する事で、もうひとつのパターンを生み出せるのです。
応用編:「好きな事が特にない」そんな人のための「好きな事を見つける方法」
このワークをするとたまに
「好きな事が思い浮かばない」
という人がおられます。
これは、そういう人にこそ取り組んでいただきたいワークと言っても過言ではありません。
やり方は簡単で
1.嫌いな事を洗い出す
2.その嫌いな事を掘り下げる
3.掘り下げた嫌いなものの理由を考える
4.その理由を自分なりに変換する
というものです。
1〜3については、前回と構造は同じものですので、具体的な方法についてはそちらを参照していただければと思います。
そして、ここで新たに登場した
4.その理由を自分なりに変換する
これがこのワークの肝となるものです。
例を挙げて説明しましょう。
例えば僕は、禁煙場所で喫煙する人を好きになれません。
(→1.嫌いな事を洗い出す)
特に、禁煙場所だと分かっているのに平気で吸い、さらに吸い殻も捨てるような態度が嫌です
(→2.その嫌いな事を掘り下げる)
その理由のひとつとして
「他人はどうでもいい、自分さえ良ければいい」という人が好きではないから。
というものが挙げられます
(→3.掘り下げた嫌いなものの理由を考える)
ここまでが1〜3で出る「嫌いなものとその理由」に当たるものです。
そして次に、4の「変換」を行います。
つまり
「ネガティブな価値観」を「ポジティブな価値観」に変換する
という事です。
この例であれば例えば
「他人はどうでもいい、自分さえ良ければいい」という人が好きではない。
↓
他人の事も自分の事も大切にする人が好き。
といったように、ネガティブな価値観を、ポジティブな価値観に変換する訳です。
「陰」と「陽」はコインの裏表のようにセットになっています。
ですから、もしあなたが「好きなもの」を思いつけなくても、この方法ならばあなたの「大切な価値観」を見つけ出す事が可能です。
そして、それによって、あなたの「望む人生」が近づいてきます。
よろしければ一度、試してみて下さい。
「自分に勝つ」事とノーベル賞
嫌いなもの、つまり自分にとっての「悪」すらも味方にし、望むものを得るための力にする。
この「真のポジティブ思考」ができるようになると、本当に人生が楽になります。
ネガティブなもの、つまり
「自分の心を傷つけ、歩みを止めてしまうもの」
これが、ポジティブなもの、つまり
「自分の心を奮い立たせ、歩みを進めるもの」
になるのですから、楽になるのも当然です。
ところで、
「自分に勝つ」
という表現がありますが、僕は常日頃からこの表現には違和感を感じてしまうのです。
なぜならば、「勝ち負け」という意識があるという事は、自分の弱さや欠点に対して
「倒すべき敵、消すべきもの」
と認識している前提があるから。
もちろん
「自分の弱さや欠点を克服しよう、乗り越えよう」
という事が間違いだと言うつもりは欠片もありません。
ただ、多くの人は「克服しよう、乗り越えよう」という意識を持つ以前に、その弱さや欠点を責めてしまいがちです。
例えば
「もう少し身長が高ければ(低ければ)●●の服が似合うのに」
「芸能人のxxxみたいな顔だったら、もっと積極的になれるのに」
「△△さんみたいに話し上手だったら、自分も人気者になれるのに」
というように。
そうやって自分を責め、傷つけてしまう事で、この
「克服しよう、乗り越えよう」
という意識が弱まってしまいます。
その結果として、弱さや欠点はそのまま変わらず。
そしてそれをまた責めてしまう。
・・・
悪循環にも程がありますよね。
自分の弱さも、欠点も、一旦全てを受け容れる。
そしてその上で、その弱さや欠点を「消す」事だけではなく「活かす」事ができないかを考え、小さな行動に移してみる。
そうする事で、今まで「問題点」だったものが「突破口」になる事もあるのです。
そうなれば、弱さや欠点は全く別のものに変わります。
ノーベル賞(化学賞/2002年)を受賞した
田中耕一さん
は、そのいいお手本です。
彼の受賞の突破口となったものが実験での失敗であり、そしてその失敗をそのまま終わらせたのではなく、試しに分析してみた事にあったというのは有名な話です。
田中さんのように、
「自分の弱さをきちんと受け容れる」
つまり弱さや欠点、失敗を否定せずに受け容れ、少しでも自分の望む方向に活用する事
これによって、自分の強さや長所だけではなく、弱さや欠点も、全ての要素が自分の背中を後押ししてくれる、自分を応援してくれるものになります。
弱かったり失敗してしまった自分という存在は「倒すべき敵」ではない。
「応援してくれている味方」
なのだと僕は思うのです。
もしあなたが
「間違ったポジティブ思考」
に縛られていて苦しい想いをしているのであれば、少しでもその縛りを緩めてあげて下さい。
その方が、ほんの少しかもしれないけれど、人生が楽に、そして楽しくなりますから。
あなたには、あなた自身が気付いていないだけで、もっともっと、もっと大きな、素晴らしい可能性がある。
ほんの少しでいい、その可能性を信じてあげて下さい。
阿部 龍太
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