自称「こだわりのお店」からブランディングのコツを学ぶ。

「ブランドデザイン」科

「我以外皆我師」

 

48個ある僕の座右の銘のひとつです。

 

全てのもの、全ての事、森羅万象全ての存在から学ぶ事が出来る。

 

そう思っていると、いつでもどこでも、とってもいい学びの場を得る事が出来ます。

 

今日は、とあるカフェで教えていただいた「ブランドになるコツ」をお伝えします。

 

 

あるカフェでの甘美なひととき

とある仕事で、とある街に呼んでいただいた時の事。

時間に余裕があったので、地元の美味しいものでも食べたいな、と思い、クライアントさんおススメのカフェに行ってみたんです。

 

結果として、色々な意味で「当たり」のお店でした(笑)

特に興味深かったのは、面白いくらいこのバランスが取れてないお店だった点です。

 

 

いやあ、本当に典型的なお店だったんです。

典型的にこの3つのバランスが崩れているお店だったんです。

 

「典型的な」という言葉を使ったのは

 

・「機能価値」がメインである。

 

・「感情価値」をきちんと提供出来ていない。

 

・よって「自己重要感価値」がゼロに近い。

 

という、その辺によくある

 

「“私、こだわってます”系のお店」

 

だったからです。

 

 

「“私、こだわってます”系のお店」が陥りやすい落とし穴

このお店は、ケーキを中心としたお店だったのですが、確かにケーキは悪くなかった。

 

ベイクドチーズケーキ

レアチーズケーキ

アップルタルト

 

と、3品いただきましたが、特にレアチーズケーキは良かった。

ゴルゴンゾーラをメインに使った、こってりとした癖になる味。

美味しかったです。

 

でも、それだけだったんです。

 

お店の雰囲気や接客があまりよろしくない。

寛いでもらおう、愉しんでもらおうという心遣いが薄い。

 

つまり、残念ながらこのお店は

 

美味しいケーキを出すお店

 

ではあったものの

 

美味しいケーキを愉しんでもらうお店

 

ではなかった、という事です。

 

ちょっと乱暴な言い方をすれば、

 

作り手の腕自慢

 

がメインのお店だった、という事です。

 

 

気持ちは目に見える

最も分かりやすかったのが、メニューの1ページ目に

 

「長時間のご利用はご遠慮ください」

 

と思い切り書いてあった点です(笑)

 

いや、書く事が悪い訳じゃないんです。

経営者として、そう思う気持ちは分かりますし、その対策をとろうという気持ちは悪いとは思いません。

 

ただ、それを1ページ目に、そのような表現で書くという事が、お客さんにどのような心理的効果をもたらすのか、という事について考えて欲しいのです。

例えば違う場所に、違う表現で書くという事もできると思うのです。

 

これは現代のマーケティングにおける基礎でもある

 

「UX(User Experience=顧客体験)」

 

とも繋がる考え方です。

 

この「UX」とは読んで字の如く、

 

お客さんが得る体験すべて

 

を指すものです。

 

つまり、商品やメニューや店構えや接客や、webサイトや広告や・・・

お客さんとの「すべての接点」で、お客さんがどのような体験をするのかを考え、それらを「最適化(「最高」ではなく「最適」です)」していく。

 

その接点での経験によって、お客さんがどのような感情を得るのか。

これを考える事は、僕の考えるブランディングにおける根幹部分でもあります。

 

なんちゃって「こだわってます系」のお店は、この「UXデザイン」が雑なんですよ。

だから運営が上手くいかなくなる訳です。

 

 

それ、わざとやってる?だったらOK!

もちろん狙ってやっている、つまりUXデザインを考えた上でのものあれば話は別です。

 

「ウチはケーキが自慢なんだ。だからケーキを黙って食えッ!キャッキャウフフ騒がず黙って食えッ!全身全霊でしっかり味わうがいいッ!そして食ったらさっさと帰れッ!」

 

という思いをベースにUXをデザインしているのであれば、メニューの1ページ目に

 

長時間のご利用はご遠慮ください

 

と書いてもいいでしょう(むしろもっとしっかり書くべきでしょう)

 

実際に、ラーメン屋でこれに似たような事を言うお店ありますよね。

 

・撮影禁止

・私語禁止

 

みたいな。

 

「ラーメンの鬼」と呼ばれた佐野実さん(故人)は、喫煙や携帯電話の使用、香水の香りが強いお客さんの入店を断っていたそうです。

それは彼のこだわりであり、もちろんそれに対する非難はありました。

しかし逆に、賛同する人も存在しており、そういう人がお客さんとしてお店を訪れていました。

 

ですから、どのようなメッセージを出すにしても、どのような顧客体験をデザインするとしても、

 

その結果、お客様にとってどのような体験となるのか

 

という事をきちんと考えた上でのものであれば、ブランドを形にする事は出来ます。

何を伝えても、問題ないのです。

 

だから、ブランドデザイナーの端くれとして、今回のカフェが良い・悪いというジャッジをするつもりはありません(個人的な好みは別ですが)

 

実際にこのお店が

「ケーキのファンを増やしたい」

と思っているのであれば、別に今の方向性でも悪くはないでしょう。

観光地エリアに近い立地なので、黙ってても客は来るでしょうから、あえて今のような形にしている可能性もありますしね。

 

ただ、もしこのお店が

「お店のファンを増やしたい」

と思っているのであれば、別のやり方はあるように思うのです。

 

そういう事を学ばせていただいたティータイムでした。

 

 

売上はどこからやってくるのか?

先ほどもお伝えしたように、

 

良い・悪い

 

なんてものはありません。

あなたがきちんと考えた上なら、どんなUX、つまりどんなメニューでも、どんな商品でも、どんなお店でもいいのです。

 

問題なのは、

 

想定とズレが生じる

 

という事。

 

Aという体験をして欲しいと思ってデザインしたのに、実際にお客さんはBという体験をしてしまった。

もちろん想定したものと、実際の顧客体験が全く同じという訳にはいかないでしょう。

ただ、そのズレが大きすぎてしまうと・・・

例えば、喜んでもらおうと思って作った商品で、嫌な思いをする人が多く出てきてしまうのであれば、当然商売はうまくいかなくなる訳です。

 

個人的には、

 

作り手の腕自慢の「なんちゃってこだわり」

 

では今後難しいと思います。

 

作り手の腕は大切です。

でもそれだけでは「機能価値」であり、お客様が得られる体験の「一部」に過ぎません。

 

もちろん、ここのレベルが、他を圧倒し、追随するものが無く、真似が不可能なレベルならばそれでもいいでしょう。

でも、多くの企業、多くのお店、多くの商品、多くのサービスは、そうではありません。

 

であれば、「機能価値」だけに頼っていては不十分です。

その他の価値を提供する事も考えるべきなのです。

 

勘違いしている人が多いと個人的には感じているのですが、

 

「売上」

 

というもののは

 

「お客さん」

 

によってもたらされるものです。

 

経営者の手腕によってもたらされるものではありません。

(それはあくまでもきっかけに過ぎないものです)

お金を払うのはお客さんなのです。

 

だからこそ、お客さんの体験を最適なものにする。

UXをきちんとデザインする。

そのために、3つの価値をきちんと考える。

 

それが、お客さんを喜ばせ、ひいてはあなたが豊かになれる王道なのです。

 

 

阿部 龍太

 

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