偉大な先人達から学ぶ「いのちの言葉」
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さて、今回あなたにお伝えしたい「いのちの言葉」はこちらです。
短所は長所にもなりえる
(エディー・ジョーンズ)
正直、ありふれた言葉かもしれません。
でも「自分には特別な長所なんか無い」と思っている人が少なくない今、この言葉についてもう一度きちんと考えるべきだと思うのです。
実際に、ラグビーの日本代表は、世界の強豪国と比べると体格に劣っていました。
確かにこれはラグビーという、身体と身体のぶつかり合いのスポーツにおいては小さくはないハンディです。
しかしエディーさんはその「ハンディ」を勝利に活かそうと考えました。
長所を活かし、短所を補う。
そのために彼が考えたのが、有名な「ジャパン・ウェイ」です。
エディーさんはこう言っています。
あらゆる物事には長所と短所があり、二つは表裏一体になっていることが、少なくありません。
体が大きいということは、力強い反面、動きが鈍くなります。
体が小さいということは、力の面では劣りますが、機敏に動けます。
このように短所の裏側には、必ず長所が潜んでいます。これを利用しない手はありません。
(『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』より抜粋)
エディーさんはこの言葉の通り、個々のプレーヤーがパワーや体格で当たり負けをしても、スピードとチーム力でチームとして勝つ戦略を実行し、3年かけて「ブライトンの奇跡」という大輪の花を咲かせました。
そして彼は、こうも言っています。
皆さんも、自分に短所があっても、諦めてはいけません。
違う角度から見れば、短所は長所にもなることが多いのではないでしょうか。
むしろ短所にこそ、勝利や成功へのヒントが隠されているのだと思います。
(『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』より抜粋。太文字は本文そのまま)
「短所が勝利や成功へのヒントになる」
と言われても、ピンと来ない人もいるでしょう。
逆にエディーさんのように、短所を長所に変換できる人もいる。
その違いは「短所」というものに対する「認識」に原因があるのだと個人的には考えています。
それを分かりやすく説明してくれている人がいますので、ここで紹介しましょう。
「短所」が生まれる場所
日本では結構有名な存在ですが、アドラーという心理学者がいます。
滅茶苦茶ざっくりした説明ですが(研究者の方ごめんなさい)彼は「劣等感」というものを3つに分けて考えました。
それは
「器官劣等性」
「劣等感」
「劣等コンプレックス」
というものです。
例えば
「身長160cmのAさんは、身長190cmのBさんよりも身長が低い」
というような「客観的に見た時の優劣」
それが「器官劣等性」です。
でも、そのAさんが
「身長160cmの自分(Aさん)は、身長190cmのBさんよりも身長が低い。だから自分(Aさん)はBさんよりもラグビーが下手である」
という「判断」を加えてしまうと、それがもうひとつの要素の「劣等感」というものになります。
そしてこの「劣等感」によって、
「身長160cmの自分(Aさん)は、身長190cmのBさんよりも身長が低い。だから自分(Aさん)はBさんよりもラグビーが下手である。だから自分(Aさん)は練習しても意味が無い」
と努力を止め、前進を諦めてしまう。
これが3つめの「劣等コンプレックス」です。
客観的な「データ」に過ぎない要素、前回の記事でお伝えしたようなただの「条件」(=器官劣等性)を、勝手に「短所である」と思い込んでしまう(=劣等感)
そしてその「思い込み」の結果、自分の成長を諦め、努力を止めてしまう(=劣等コンプレックス)
この流れから「短所」が生まれる訳です。
ちなみにアドラーは「劣等感は悪いものではない」という考えを持っています。
劣等感を、自分をより良くする、前進するための力として使う(「補償」と彼は呼んでいます)
それによって自分自身を成長させ、そして世界をより善いものにできる。
アドラーはそう考えていました。
エディーさんと日本代表メンバーの皆さんが「ジャパン・ウェイ」で実現した事が、まさにこれだったのではないでしょうか。
「短所は思い込み、つまり誤った見方によるものであり、別の角度から見れば短所は長所にもなりうる」
「きちんと努力すれば、短所は長所となり、そして勝利へと結びつく」
「だから、正しく見て、正しく努力しよう」
これがエディーさんが当時の日本代表メンバーに、そして我々に伝えてくれている事だと個人的には思うのです。
「自分には特に長所などない」と言うあなたへ
「自分には長所など無い」
今まで色々な方からお話を伺ってきましたが、そう思っている人は少なくありませんでした。
しかし、そう言う人達はこの
「短所を正しく見る」
「その短所を長所に変換する」
「その長所を伸ばすべく、正しい努力をする」
という事が、もれなくできていません。
アドラーの言う「劣等コンプレックス」に溺れてしまい、冷静に物事を見て、そして判断できなくなっているのです。
もちろん「劣等コンプレックス」に溺れたいのであれば、それでもいいと思います。
あなたの人生ですから。僕が何かを言う資格などありません。
でも、そうではなく、自分を少しでも成長させたい、大切な人と一緒に笑顔でいられるようにありたい。
心の奥底で本当はそう思っているのであれば、まずはあなたの短所をきちんと見てみてはいかがでしょうか。
エディーさんの言うように「短所を違う角度から見る」ためにはまず、その短所と向き合う必要があります。
そうする事でその短所の「別の角度」が見え、その結果「長所」に変換できます。
是非一度、取り組んでみてください。
あなたには長所があります。
ただ、今のあなたにはそれが長所に見えていないだけです。
短所に見えているだけです。
気が向いた時でいい。
その「短所」をもう一度見てみてください。
そしてその「短所」を「別の角度」で見られないか、「別の表現」で表せないか、考えてみてください。
そして見つかった「長所」を伸ばすべく、少しずつでいいから何か行動を変えてみてください。
あなたの人生には、もっともっと可能性があります。
そしてその可能性を実際に開くのは、あなたにしかできない事です。
あなたにとっての「ブライトンの奇跡」が起きるのを、楽しみにしています。
阿部 龍太
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