ラグビー日本代表が教えてくれた「日本人としての誇り」

「ブランドデザイン」科

あなたはスポーツは好きですか?

好き?じゃあ何が好きですか?

野球?サッカー?水球?(水球も結構面白いですよ)

 

僕はラグビーが好きです。

 

いや、嘘です。

 

僕はラグビーが大好きです。

 

2015年ワールドカップの南ア戦は今見ても泣けます。

 

いや、嘘です。

 

見なくても思い出すだけで泣けます。

矢野さんの実況を思い出すだけで泣けます。

 

「世界のみなさん!これが日本代表です!!!!!!!!!!」

(南ア戦の最後の矢野さんの実況、いや絶叫)

 

・・・矢野さん、素晴らしい実況をありがとう(感涙)

 

まあ、溢れる僕の涙はどうでもいいのですが、これだけ僕がラグビー推しなのは、ただ観ていて楽しいという事だけではありません。

ラグビーは、人数やポジション、スポーツとしてのシステム等、非常に多面的で、多様性に富んだスポーツです。

だからこそ、観ている我々に、多くの感動と、そして新たな視点や考え、ビジネスや人生において、非常にためになる事を提供してくれます(まあラグビーに限った話ではありませんが。スポーツっていいですよね)

 

例えば、2015年のワールドカップでは、こんな事がありました。

 

「日本人」とは何か?

実は今回の代表メンバー、31人中10人がいわゆる

「外国出身の選手(帰化選手含む)」

だったんです。

もちろん、ラグビーのルール上全く問題ありませんし、他の強豪国も同じように外国人をメンバー入りさせています。

 

でも、これに対して

「日本代表というくらいだから純日本人のチームの方がいいよね。そうじゃないと感情移入しにくいし、応援に熱が入らないよね」

というような意見が(まあこれは今回に限らず以前からあったんですけど)出ていたんです。

 

さて、ここで言われている「日本人」とは、一体どういう存在を指すのでしょうか?

日本国籍を有する人?

日本で生まれ育った人?

日本語を喋る人?

名前が漢字の人?

先祖代々日本で生まれ育った人?

・・・

色々な意見があると思います。

 

もしかしたらこれを読んでいるあなたもこういったチーム編成に疑問を感じているかもしれない。

そういう人にこそ、この先を読んでもらいたい、そう思ってこの記事を書きました。

よかったら、お付き合いください。

 

 

「君が代勉強会」:「外国人」選手が大切にしたこと。

代表戦で必ず歌われる「国歌」。

この国歌を非常に大切にしていた外国人選手がいます。

 

キャプテンのリーチマイケル(ニュージーランド出身)選手

彼は、率先して「君が代」の歌詞について勉強し、他の外国出身の選手や日本人選手にも歌詞を教えていたのだそうです。

「君が代の中身を自分たちにつなげて、歌詞を理解して歌わないとダメだと思います」

(リーチマイケルのインタビューより抜粋)

 

万葉集でも日本について

「言霊の 幸(さき)はふ国」
(言葉の霊力が幸福をもたらす国)

という記載があります。

 

これは言葉そのものが力を持つ、という事を表しているのですが、ただ単に言葉を使うのではなく、心を込めて使う。それによって言葉はより大きな力を持ちます。

 

彼は知ってか知らずかその事を強く意識していた。

ただ歌えばいいという訳ではなく、自分の魂を入れて国歌を歌おうとしていたのです。

 

彼は「外国人が代表選手なんて」という声があるのは知っていました。

だからこそ、彼は彼にできる事に真摯に取り組んだ。

「ラグビー選手」としてただ試合に出るだけではなく、一人の人間として「日本代表」に相応しい存在になれるように。

彼は、「日本代表」として、彼のできる事に真摯に取り組んだのです。

 

ニュージーランドからやってきた外国人が日本代表となり、代表として相応しい存在になろうと自ら心を開き、歩み寄る。

「相手を思い遣り、自分にできる事をやり切る」

彼のその精神こそ、僕が彼を「日本代表」であると心から感じる所以なのです。

 

 

「すみません、関西弁で」:「外国人」選手の気遣い

ラグビー好きなら絶対に避けては通れない男。

それがこの人。

 

トンプソンルーク(ニュージーランド出身:通称トモさん)

 

大切にしている信念は「努力」。

そんな彼の体を張った献身的なプレーはチームにチャンスと活力を与え、そして観る人の心を震わせます。

 

度重なる負傷で足はボロボロ。それでも諦めずにボールを追い、タックルをし、体を張る。その姿は、多くのラグビーファンの心を捕らえて離しません。

 

そんなトモさんの人柄を表すインタビューがあるのでここで紹介させてください。

日本代表の帰国記者会見の動画です。

個人的にとってもとっても感動するので、もちろん全てを観ていただきたいのですが、この動画の25分30秒くらいのトモさんのメッセージにあった、

「すいません、関西弁で」

という言葉に、僕は思わずこみ上げてくるものを抑えきれませんでした。

 

彼はインタビュー等でよくこれを口にするのですが、そもそも関西弁を使うことに悪いことなんか何も無いですよね?

むしろ彼の人柄が知れて、個人的にはより好感を持てるくらいです。

 

でも日本全体で見た場合、関西弁は「標準語」ではない。

(関西弁を貶めている訳ではありませんよ。念のため)

そして公式の会見という場。

そんな状況において、上下関係や言葉遣いを大切にする彼だからこそ、こういった

「気遣い」

を見せてくれているのではないでしょうか。

 

ここで伝えたいのは、上下関係や言葉遣いが日本人として大切だという話ではありません。

ニュージーランドから来た一人の外国人の男性が、日本社会のある種の文化の一つを受け容れ、尊重してくれている。

彼のその

「異文化を受け容れ、尊重する心の広さ」

これこそ僕がトモさんに心からの尊敬と感動の念を感じて止まない要素なのです。

 

ちなみにトモさん、今回のW杯で代表からの引退を表明しています。

彼は今までも、そして今回も身体を張ってチームのために貢献してきました。

過去のW杯にも日本代表として出場しており、一勝もあげられなかったという屈辱を二度も味わっています。

 

そして自分で最後と決めた今回のW杯で、チームは歴史的な躍進を遂げた。

過去には少なからずの人に批判をされて、悔しい思いもしたでしょう。

だからこそ、彼の喜びはひとしおだったに違いない。

 

そんな状況での最後の記者会見で、少しくらい感情的になってしまったとしても全然おかしくないですよね?

 

でも彼はそんな場ですら、いつものように

「すいません、関西弁で」

という気遣いを見せてくれた。

そういう彼の姿勢に、個人的にこみ上げてくるものを抑えられないのです。

 

このふたりだけではありません。他の選手だって同様です。

皆、日本に対する気遣いを持ってくれています。

日本に対して愛情を持ってくれてその気持ちを行動で表してくれています。

 

例えば

ホラニ龍コリニアシ選手(トンガ出身)

彼の名前にある「龍」という文字は、お母さんのお名前「LIU」を日本語に当てたものだそうです。

そして彼もトモさん同様、日本の礼儀作法を大切にしており、いつもは子煩悩の優しい父親なのに、礼儀に関してはとても厳しいのだそうです。

彼も、日本をとても尊重し、受け容れてくれています。

 

また今回大注目を浴びた

アマナキ・レレイ・マフィ選手(トンガ出身)

彼は、母国のトンガからも代表として声がかかっていたのにもかかわらず、日本代表を選択してくれています。

 

彼らだけではありません。

 

マイケル・ブロードハースト選手(ニュージーランド出身)

クレイグ・ウイング選手(オーストラリア出身)

マレ・サウ選手(ニュージーランド出身)

カーン・ヘスケス選手(ニュージーランド出身)

アイブスジャスティン選手(ニュージーランド出身)

ツイヘンドリック選手(ニュージーランド出身)

 

皆、ラガーマンとして、ひとりの人間として、日本のために身も心も捧げてくれています。

そんな彼らが批判されるのが個人的には本当に不思議でたまらないんです。

 

何をもって「日本人」と言えるのか?

このように今回僕は、ラグビーというスポーツから

「日本人とは何なのか」

という事について考えさせてもらいました。

 

僕個人の意見としては、彼らはただ単に生まれた場所が日本でなかっただけの「海外生まれの日本人」です。

だから不思議でならない。

彼らを批判する人達は一体何を見ているんでしょうか?

 

国籍?

肌の色?

使う言葉?

・・・

 

そういう部分で判断する人は、目が節穴で腐っていてもうどうしようもないとは決して言わないけれど、何か大切なものを見失ってしまっているように思うのです。

 

確かに、彼らは日本に生まれ育った訳ではありません。

日本国籍を持っていない人もいますから、厳密には「日本人」と言えない事ももちろん分かります。

それでも僕には、彼らを「日本代表」とそして「日本人」という言葉以外で表現できないのです。

(僕の言語能力が低いだけなのかもしれませんが)

 

日本を愛し、そして日本に貢献しようと、その愛情を実際の行動に表している。

自分の意志で日本の文化を尊重し、受け容れ、その中で真摯に生きている。

そういう人を「日本人」と呼ばずして、何と呼べばいいのでしょうか?

 

日本に生まれ、
日本国籍を持ち、
日本語の名前を持ち、
日本語を話し、
普通に日本社会にとけ込んでいる
・・・

なのに、日本を貶めるような言動をし、世界を感動させるどころか迷惑をかけ、嫌な気分にさせるようなことしかできない残念な人や企業が少なくない。

そんな現状を見ると、少なくとも僕にとっては彼らのような「日本代表」はむしろ誇りであり、素晴らしいお手本なのです。

 

僕自身もまだまだ発展途上で、日本人としてたいしたことができている訳ではありません。

彼らのように真摯に毎日を生きている訳でもありません。

だからこそ彼らを尊敬するし、彼らのようにありたいと思う。

そうなろうと努力できる。

「感情移入できない。応援できない」

と思うどころか、感謝しかありません。

 

日本代表を選んでくれて、本当にありがとう。

あなたたちは僕の誇りです。

 

 

阿部 龍太

 

 

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