とある企業のリコール事件と、歴史的大虐殺から学ぶ「商売繁盛の神髄」

「ブランドデザイン」科

突然ですが、ふたつ質問があります。

 

質問1「あなたにとって商売とは、何のためにあるのでしょうか?」

 

質問2「1の理由は何ですか?」

 

様々な答えがあると思います。

 

「お金儲けのため」

「困っている人の役に立つため」

「自分の夢を実現させるため」

「世界をより善くするため」

・・・

 

どんな答えであろうとも、正解・不正解はありません。

あなたが信じるもの、それがあなたにとっての正解です。

 

ただ、質問2に関しては少し異なります。

 

もし、質問2に対して

 

「●●さんが言っていたから」

 

とか

 

「一般的にそう言われているから」

 

というようなもの、つまり

 

「自分の意志、自分の心の声ではない、誰か他の人の言葉」

 

を答えにしているのであれば、それは恐らくあなたを幸せにはしてくれません。

その意味において、2の答えによっては1が(あなたにとって)不正解になってしまう場合もあるでしょう。

 

一時的にお金は儲かるかもしれない。

でもその結果訪れるのは、失望や苦しみ。

 

僕は予言者でも何でも無いですが、これに関してはほぼ確実に当たっている自信があります。

今回はその事についてお伝えしようと思います。

 

 

あの会社のこんな事件

最近、こんなニュースがありました。

 

「天然100%」にシリコーン ジョンマスター自主回収

(朝日新聞デジタル)

 

オーガニック化粧品ブランドとして有名なジョンマスターオーガニック社が、商品の成分表示ラベルが実際のものと違うとして商品を自主回収したそうです。

余談ですが僕、実は今回の対象商品を持っているのですが、修正された成分内容の違いがインド人もビックリな、なかなかのレベルでした(苦笑)

 

また、こんなニュースもありました。

 

日産、リコール約121万台で費用約250億円 無資格者による完成検査で

(ロイター)

 

本来、きちんとした資格を持つ検査員が行うべき自動車検査を、無資格者が行っていたのだそうです。

 

これらのニュースから、我々は非常に重要な事を学ぶ事ができます。

それは

 

「商売繁盛の神髄」

 

についてです。

 

両社を非難するだけなら猿でも出来ます。

きちんと学び、是非あなたの商売繁盛に活かしてください。

 

 

商売繁盛の神髄、それは…

上杉鷹山

二宮尊徳

渋沢栄一

松下幸之助

P・ドラッカー

S・ジョブズ

・・・

古今東西、多くの方が様々な言葉で残してくれている商売繁盛の神髄、

それらを今の時代に合う形で僕なりにまとめるのであれば

 

「応援してもらう事」

 

これに尽きます。

ちなみに、このために必要なのが「ブランド」である、というのが僕が提唱しているものです。

 

この「応援してもらう」という事。

そのために必要となるのが

 

「信頼を得る事」

 

です。

 

「この人なら信頼できる」

そう思ってもらえるからこそ、あなたの商品やサービスを買ってくれたり、誰かに紹介してくれたりする訳です。

 

そして、この信頼を得るために必要な事。

その根本にあるものが

 

「自分の心の声に沿って生きる事」

 

です。

 

つまり、

 

「自分は何を大切にしているのか?」

「何をしたいのか?」

「どうなりたいのか?」

「何をすべきなのか?」

 

「自分は何が嫌なのか?」

「何をしたくないのか?」

「何を避けたいのか?」

「何をすべきでないのか?」

 

という事を自分なりに明確にし、それに沿って生きるという事です。

 

「自分の心の声に沿って生きる」

  ↓

「信頼を得る」

  ↓

「応援してもらう」

  ↓

「売上が上がり、商売が成長する」

 

これが僕の考える、今の時代における商売繁盛の神髄であり、僕が伝えているブランディングというものです。

 

 

今回の事件の「根幹」にあるもの

上で例に出した二社は、今回この

「自分の心の声に沿って生きる事」

を疎かにしてしまった。

僕はそう考えます。

 

ジョンマスターは「オーガニック」を謳い、

「地球に敬意を払うラグジュアリーなビューティーラインを」

というコンセプトを持っているそうです。

ジョンマスターオーガニック公式サイトより抜粋)

 

ただ今回、ジョンマスターは地球の一部でもある顧客という存在に敬意を払う事を怠った訳です。

(ジョンマスターが顧客を地球の一部と見なしていないのであれば話は別ですが)

 

ちょっと蛇足ですが、今回の回収について書かれているページには、シリコン等の合成成分を使用している事に対して

 

なお、上記の合成成分は、いずれも厚生労働省より化粧品への使用が認められている成分です。

またこの他の成分はオーガニック又は天然由来であり、回収対象の38製品は、すべて、USDA(米農務省)が定める「70%以上オーガニック原料の製品」としての基準を満たしていることを確認しています。

「自主回収に関するお詫びとご説明」より抜粋)

 

と書かれています。

確かに毒物が入っている訳ではないでしょうから、使用する事によって身体に悪影響が出るとは限りません。

(もちろん、体質によって一概には言えないのでしょうが)

 

でも、問題の本質はそこではないのです。

(個人的に、この記述においてジョンマスターは今回、大きな大きな失敗を犯してしまったと考えます)

今回のテーマとは少しズレますので詳細はここには記載しませんが、もしよろしければ一度考えてみてください。

 

また、日産は、自動車の品質について

 

日産は、お客様の満足度と信頼を高め、長きにわたり日産の製品とお付き合いいただくために、品質を最重要課題として捉えています。

日産公式サイトより抜粋)

 

というメッセージを掲げていますが、残念ながら今回の件は、少なくとも現時点では彼らにとって品質が最重要課題ではなくなっているという事を示しています。

 

もちろん、法令違反を犯した訳でもないし、実際にこれが原因の事故が起こっている訳でもありません。

今回は「最終検査」におけるミスであり、それまでの個々の行程でもきちんとチェックは行われているため、品質に大きな問題が出るとは限らない。

最初の記者会見でそんな事が言われていましたが、確かにその通りかもしれません。

 

だからと言って「たいした問題ではない」という訳にはいかないのです。

 

 

今回の事件における、両社の共通点

ジョンマスターと日産、彼らの今回の事件には、ひとつの共通点があります。

 

目に見える部分を言うならば

 

「顧客の信頼を損なってしまった事」

 

なのですが、その根本には

 

「自分が大切にしているものを疎かにしてしまった事」

 

というものが存在しています。

 

自分が大切にしているものを疎かにしてしまった。

それによって、顧客に提供する価値を下げ、結果として顧客の信用を損なってしまった。

 

これが今回例にあげた両社の共通点です。

 

この

「自分が大切にしているものを疎かにしてしまう事」

これは、商売繁盛に関するポイントに限りません。

人間として生きる上で非常に重要なポイントを秘めています。

 

少し重い話になりますが、非常に重要な話ですので、ここまで読まれたのであれば是非読んでみてください。

 

 

数百万人を死に追いやった男を産み出した「闇の根幹」

アドルフ・アイヒマン

 

この名前を知っているでしょうか?

 

この人物を知らなくても、

ナチスによるユダヤ人の大量虐殺

については少なからずの人が知っているでしょう。

 

老若男女問わず数百万人の命が、この世界から消えた。

彼はその大虐殺の指導的役割を担った人物のひとりです。

 

第二次大戦後、逃亡していた彼は捕らえられ、裁判にかけられます。

その裁判を記録していた思想家のハンナ・アーレント(彼女もユダヤ人です)によって、彼のような存在を産み出した「闇」の根幹が明らかになりました。

 

数百万人もの人の命を無慈悲に奪った大量虐殺の指導者のひとり。

血も涙も無い悪魔か化け物かと思われていたその男は、驚く程何の変哲も無い普通の男だったそうです。

 

自分に課せられた職務を行っていただけ。

上からの命令に従っていただけ。

 

自分の心の声に沿って生きるどころか「思考停止」状態だった。

これこそが、世紀の大虐殺の根幹にあったものなのです。

 

アーレントは

 

思考の放棄によって、何の変哲もない普通の人間でも悪魔のような所行を行ってしまう。

つまり「思考の放棄」とは「人間である事の放棄」と言える。

 

という事を言っています。

 

この「思考の放棄」こそが、今回例に出した2社の事例の根本にあるのではないか、僕はそう考えています。

 

 

健やかなる時にも、病める時にも。

今回例に出した2社は

「自分が大切にしているものを疎かにしてしまう事」

で顧客の信頼を損なうという事態に陥りました。

 

ジョンマスターは成分を偽り、日産は品質を偽った。

それは、自分自身の心を偽ったという事であり、それによって彼らは顧客を裏切っただけではなく、自分自身をも裏切ってしまった。

僕はそう考えます。

 

なぜ、彼らは顧客を、そして自分自身を裏切ってしまったのか。

そこには、アーレントの言う「思考停止」があったのではないでしょうか。

 

「思考停止」によって、彼らが今まで大切にしていたものを疎かにしてしまった。

それまで彼らが真摯に積み上げてきた偉大な能力、偉大な意志を蔑ろにしてしまった。

そして顧客を疎かにしてしまい、その結果、顧客の信頼を損ねてしまった。

 

彼らは別に人を殺した訳ではありません。

だからもちろん、彼らとアイヒマンを同列に並べる意図は欠片もありません。

 

でも、彼らとアイヒマンの「根幹」にあったものは同じものではないか。

つまり両者共に「思考停止」というものが根幹にあったが故に、望まぬ状況を招いてしまったのではないか。

非常に個人的な見地に過ぎませんが、僕はそう思うのです。

 

そしてこの「思考停止」は彼らに限ったものではありません。

あの会社にも、その人にも、その片鱗は見えています。

僕にも、あなたにも、ほとんど全ての人の身近に「思考停止」という闇の世界への入り口がぽっかりと口を開いて待ち構えているのです。

 

だからこそ、常に考えて欲しい。

健やかなる時にも、病める時にも、喜びの時にも、悲しみの時にも、富める時にも、貧しい時にも。

商売に限らず、常に考えて欲しいのです。

 

 

最後に、もう一度。

冒頭に、ふたつの質問をさせてもらいました。

これらについて

 

「自分の意志、自分の心の声ではない、誰か他の人の言葉」

を答えにしているのであれば、それは恐らくあなたを幸せにはしてくれません。

 

と僕が言ったのは、上でお伝えした「思考停止」というものがその根幹にあるからです。

 

あなたが大切にしているものを大切にしてください。

そのために必要な行動をしてください。

 

そして、その第一歩として必要なのが「考える」という事なのです。

 

あなたが大切にしているものは何でしょうか?

それを今以上に大切にするために、今から出来る事は何でしょうか?

今の時点で出来ない事があるならば、それをほんの少しだけでも出来るように前進させてくれるものは何でしょうか?

 

ほんの少しでもいい、是非一度考えてみてください。

それがあなたのブランドに、つまりあなたの大切な人と、あなた自身の笑顔に繋がるのですから。

 

 

阿部 龍太

 

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