お鮨。
「魚を旨くする」と書いて「お鮨」
何て分かりやすい文字、そして甘美な響きなのでしょうか。
それほど多くはないものの、今までいくつかのお鮨屋さんで旨いお鮨を食べさせていただきましたが、その中でも非常に対照的な2つのお店から、
これからの時代「消えるブランド」と「生き残るブランド」
について学ばせていただきました。
今日はその事についてお伝えします。
築地のとあるお鮨屋さんで学んだ「これからの時代に消えていくブランド」
ある日の事。
僕は築地にいました。
言わずと知れた魚処、「築地市場」です。
そこで
「これからの時代に消えていくブランド」
を体感させていただきました。
築地でお鮨をいただくなら、やっぱり寿司大さんの僕。
でもその日は(いや、いつもですが)行列で断念。
「たまには違うお店に行ってみよう」
と歩いていたら、立地の割に全く行列が無かった、とある鮨店。
ランチの握りを頼みました。
出てきたお鮨。
全くリサーチしてなかったお店なのでそれほど期待はしていませんでしたが、なかなかに旨い。
握りも丁寧だし、ネタの仕事もきちんとしている。
美味しく頂きました。
ところが、です。
このお店、女将さんのサービスが生ゴミ以下、いやそんな事言ったら生ゴミに失礼すぎるレベルだったのです。
言葉遣い、声の質、気遣い、接客の所作、全てのレベルが致命的に低い。
最初、テレビ番組のドッキリかと思った程の酷さ。
この温厚な僕が、しかも年老いた女性に、本気でキレそうになるレベルです。
お会計の時に
「グズグズしてないで早く出しなさいよ!」
って言われた時は、本当に奥歯ガタガタ言わそうかと0.3秒くらい悩みましたから(嘘)
後で調べてみた所、僕と同じような感想が出てくるわ出てくるわ。
道理で、行列ができてなかった訳だ(笑)
それでも、観光地として名高い築地。
僕のようにふらっと入ってきた客だけでも売上がたつのかもしれません。
でも、市場が移転した後はどうなるのでしょうね。
お鮨そのものは美味しかったけれど、あのお店が残れるとは思えませんし、無くなった方が世のため人のため、自然の流れだと思います。
銀座のとあるお鮨屋さんで学んだ「これからの時代に生き残るブランド」
別のある日の事。
知人の経営者の方に連れて行っていただいた、銀座に店を構えて数十年のお店。
そこで
「これからの時代に生き残るブランド」
を体感させていただきました。
まず鮨が旨い。
お鮨を口に入れる時、指に触れますよね(握り鮨は手で頂くのが僕の流儀)
その時の指に感じる弾力。
そして口に入れる時に、唇に触れるじゃないですか?
その時の唇に吸い付くしっとりした触感。
まるで赤ちゃんの掌のようなもっちり&しっとり感
そして口の中で噛むごとに、口内で主張しながらシャリと調和する旨味。
五感をフル活用して美味しく頂きました。
(しかも想像以上にリーズナブル!)
有名人がこっそり通っているらしいのですが、それも分かるお店でした。
ただ、このお店の人気が高いのは、お鮨の味だけではないようです。
握ってくださる親方の人間味溢れるキャラクター。
その親方がしてくださるお話。
昔の銀座の街の話。
親子の話。
修業時代の話。
美意識の話。
・・・
その辺の講演家なんて話にならない程、面白く、ためになる。
お鮨の素晴らしさと、親方の魅力の素晴らしさ。
これこそが
「これからの時代に生き残るブランド」
の重要な要素だと僕は考えます。
ふたつのお鮨屋さんの何が違ったのか?
築地のお鮨屋さんも、銀座のお鮨屋さんも、お鮨そのものの味は良かった。
でも、片方は生まれ変わってもまた何度でも行きたいと思え、もう片方には生まれ変わっても絶対に行かない。
何が違うのでしょうか?
商品だけではなく、関わる人間の魅力を高めよう!
と考える人が少なくないと思いますし、もちろんそれは間違ってはいないのですが、ここではもう少し深く考えてみたいと思います。
まあ、このブログを読んでくださっているあなたであればもう答えは出ていると思うのですが、ここで僕が言いたいのは
「全体のデザインの重要性」
という話です。
以前、こんな記事を書きました。
「マーケティングだけ」とか「商品だけ」といった
「部分の最大化」
ではなく、商売そのものという
「全体の最適化」
が必要なのだという話です。
また、こんな記事も書いています。
「いいものならば売れる」という言葉の「ウソ」と「ホント」
についてお伝えしています。
このふたつをざっくりとまとめると
「単なるいいもの」とは「部分」にのみ囚われているもの。
だから、売れない。
「本当にいいもの」とは「全体最適化」されたもの。
だから、売れる。
という事になります。
もう少し違う表現で言えば
ダメだったお鮨屋さんは
(商品)x(接客)
=100x0=0
であり、最高だったお鮨屋さんは
(商品)x(接客)
=100x100=10000
だったという事。
どちらが「売れる」のかは、一目瞭然ですよね?
仮にお鮨の味が同じレベルだったと仮定しても、これだけの差がつく訳です。
そしてここでは「商品」と「接客」という要素だけで表示していますが、それ以外にも様々な要素がある訳です。
例えば
(商品)x(接客)
=10x10=100
というお店Aと
(商品)x(接客)x(店舗)x(マーケティング)
=5x5x5x5=625
というお店Bがあったとしたら、商品力も接客力も負けているBの方が最終的に勝てる(売れる)という事になります。
ひとつやふたつの要素で負けていても、その他の要素を組み合わせれば勝ち目がある、という事なのです。
是非、考えてみてください。
色々な要素がありますから。
色々なお店を観て思うのですが、やはり根強いファンを持つ企業やお店はこの「要素の組み合わせ」がきちんとできています。
商品は素晴らしいのに、webの活動を軽視しているからお客さんの認知が少ない。よって来客が少ない。
とか、
マーケティングに力を入れているのに、提供しているサービスの質が低くて顧客満足を下げている。
とか。
そういう「磨くべき要素」を適切に見つけ、そして磨き上げる。
そういうお店や企業なれば売れるようになる。
そのためには、全体を観る事が必要だと僕は考えます。
1.「全体」をできるだけ具に観て、
2.そしてできるだけ具に要素を拾い上げ、
3.それらの質を高めつつ組み合わせて、全体のバランスを底上げしていく。
これによって、結果として売れるようになるという訳なのです。
更に、見ていただければお気づきでしょうが、この計算は「掛け算」です。
つまり、どこかひとつが「0」ならば、自動的に全体が「0」になるという事。
僕が経験した最悪のお鮨屋さんは、まさにこれでした。
いくら職人さんが旨いお鮨を握ったとしても、いくら立地が良くて努力しなくても人が入ってきたとしても、女将さんの生ゴミ接客(生ゴミさん、ごめんなさい)によってその努力は無駄になってしまう訳です。
本当に、もったいない。
一流企業と呼ばれる大企業がどう考えても絶対にやってはいけない事を平気でやってしまう昨今、この事はどうやら、多くの企業や人が忘れてしまっているようです。
あなたは是非とも、心に置いていただければと思います。
実際に、こんな事がありました。
以前、とあるショップのホームページの相談を受けた事があるのですが、2ヶ月後の売上が150%を越えるという結果を出されました。
(もちろん、その月以降も売上の伸びは変わりませんでした)
ただ、その時に僕が提供したアドバイスは、商品ページを1カ所だけ修正しただけ(本当です)
たったひとつの変更が、結果としての「売上」の面で大きな成果を得る事ができた訳です。
少し内情をお話しますと、このショップは商品の質と、その商品を扱うスタッフの質、そして立地が非常に良かった。
でもその素晴らしさが、そのwebサイトであまり表現できていなかった訳です。
喩えるならば
(商品の質)x(スタッフの質)x(立地)x(webサイト)
=10x10x10x1=1000
みたいな感じ。
それを僕のアドバイスで
(商品の質)x(スタッフの質)x(立地)x(webサイト)
=10x10x10x2=2000
になったというだけの話です。
(数値はあくまでもイメージです。ほんの少しの変化が大きな成果を生む事もあるという事を理解していただければ幸いです)
奇跡?違います。
こういう事は、別に奇跡でも何でもありません。
「全体」をきちんと観ながら、ひとつひとつの「要素(部分)」をきちんと高めていく。
「各要素(部分)」をバラバラにせず、ひとつの「全体」として考え、行動に移す。
この「正しい努力」をきちんと積み上げれば、時間がかかるかもしれないけれど、誰にでも可能な事なのです。
だから、あなたにも不可能ではありません。
ピッチャーだけが強くても、野球では勝てません。
フォワードだけが強くても、サッカーでは勝てません。
ウイングだけが強くても、ラグビーでは勝てません。
ですから、これからの時代にあなたが生き残るためには、「全体」をきちんと観ながら、ひとつひとつの「要素(部分)」をきちんと高めていく事が必須だと僕は考えます。
個々の要素のレベルと全体のバランス。
双方が並び立つからこそ、スポーツも商売も成果がついてくるのです。
そしてこの「生き残る商売」ついて、ひとつ非常に重要な思考、と言うか姿勢というものがあります。
今回例で出したふたつのお鮨屋さんにおいて決定的に違っていたもの。
次回、その事についてお伝えしましょう。
阿部 龍太
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