問題発言をする政治家のあなたに教える、炎上しないコミュニケーションのコツ

「ブランドデザイン」科

なぜ、人はコミュニケーションですれ違いを起こすのか?

 

それを強く考えさせられる、とある出来事がありました。

 

先日から色々な所でニュースになっている、大西英男議員(自民党)の三原じゅん子議員(自民党)に対する問題発言。

色々な意見があるようで、非常に感情的な声も出ているようです。

 

内容が内容なので感情的になるのも理解できるのです。

とは言え、怒っているだけでは何も変わらないのもまた事実。

仮に大西議員が辞職したとしても、彼のように問題発言をする議員は他にもいる訳ですから。

 

ですので、今日は特定の誰かを責めたり擁護したりするのではなく、

どうすれば少しでもこのような残念で不毛な事が減るのか?

という事について、考えてみようと思います。

 

 

なぜ問題発言になったのか?

今回の問題となった背景を確認しようと、5月15日の自民党厚生労働部会の議事録を探してみたのですが見つからない(汗)

(*どなたか、ご存知の方教えてください。ついでに自民党のサイト、できればもう少し見やすくしてください。いいエンジニア紹介しますから・・・)

 

仕方ないので、三原議員や大西議員のブログやニュースサイトをチェックした所

 

・飲食店での受動喫煙防止というテーマでの会議で、三原議員ががん患者の方の就労の厳しさについて発言した所、大西議員から「働かなくていいんだ」という発言があった。

・三原議員は、大西議員の発言に異議を表明

・この「働かなくていいんだ」という発言自体は、大西議員本人も認めている。

・ただ大西議員本人は「そのような趣旨で言った訳ではない」と弁明し、「(喫煙可能の店で無理して)働かなくていいのではないか」との趣旨で発言をしたと後日説明した。

 

という事のようです。

これらの情報が正しいという前提で考えるならば

「言った事は言ったけど、そういう意図で言った訳ではないよ。悪気があった訳ではないんだよ。」

という事になります。

 

つまりある種の「すれ違い」が起こっていたと言う事です。

(そう言えばこの「そういう意図で言った訳ではない」という「すれ違い」は、先日の今村復興相の発言問題でもありましたね)

 

なぜ、このような「すれ違い」が起こってしまうのか?

どうすればこのような「すれ違い」を失くせるのか?

 

ある思想家の考えを元に考えてみましょう。

 

 

「おーい、アレ取って」の不思議な関係

ウィトゲンシュタインという思想家によって生み出された

「言語ゲーム」

という考え方があります。

 

簡単に言うならば

「日常で使われる言語は状況(背景)によって意味が変わる」

という事。

 

例えば、あなたが家族に

「おーい、アレ取って」

と言われたとしましょう。

 

この時

 

【状況(背景)A】

・その発言をした人は食事中

・食べていたのは海鮮丼

 

【状況(背景)B】

・その発言をした人は入浴中

・お風呂から出ようとしていた

 

というふたつの状況(背景)で、あなたは何を渡してあげるでしょうか?

例えば

 

【状況(背景)A:食事】

・醤油

・山葵

・お茶

 

【状況(背景)B:入浴】

・タオル

・ひげ剃り

・歯ブラシ

 

のようなものが出てくると思います。

 

ここで言いたいのは、

同じ言葉(「おーい、アレ取って」)でも、その状況(背景)によってその言葉が指し示すものは違う

という事。

 

だから、もし

【状況(背景)A:食事】の時にひげ剃りを渡す

【状況(背景)B:入浴】の時に醤油を渡す

なんて事をしたら、コミュニケーションが成り立たちません。

成り立つとしたらそれはコントの世界だけです。

(関係ないですけど、アンジャッシュさんの「勘違いコント」は秀逸ですよね)

 

でも、今回大西議員はこの「コント」をしてしまった訳です。

しかも全然笑えないコントを。

 

 

大西議員の「コント」の裏舞台

彼がやってしまった「コント」の裏にあったのは

三原議員の発言の「状況(背景)」を無視して、自分の「状況(背景)」で発言してしまった

という事。

三原議員が醤油を取ってほしい時に、シャンプーを手渡したみたいなものです。

 

彼は自身のブログで

 

今回の発言は、飲食店における従業員の方の受動喫煙対策の議論をするなかで、「(喫煙可能の店で無理して)働かなくていいのではないか」との趣旨で発言をいたしました。

その発言が、がん患者が働かなくてもいいという趣旨ではないことは、その後すぐに「そういうことは言ってないでしょ」と申し上げたことからもご理解いただけるものと思います。

大西議員ブログより抜粋)

 

と釈明しています。

 

120万歩くらい譲って考えるとするならば、彼自身の中では

「無理して働かなくていいんだよ」

といったような

「思いやり」の発言

だった訳です。

 

しかし、その時の「状況(背景)」は、

・三原議員ががん患者の方が仕事をするために、職場環境を整える、受動喫煙をしなくて済む環境にする事の必要性を訴えていた。

・三原議員はがんに罹った経験がある。

というものがあった訳です。

 

そこに

「働かなくていいんだ」

と、ただそれだけを発言したらどうでしょうか?

 

「思いやり」の発言に聞こえるでしょうか?

 

 

我々が大西議員から学ぶべき事

もし大西議員が「言語ゲーム」の概念をきちんと理解していたら…

つまり、三原議員の発言の状況(背景)、そして彼女の意図を理解した上で発言したならば、今回のような問題は起こらなかったのかもしれません。

でも残念ながら、彼はそれができなかった。

だから多くの人を悲しませる残念な事になってしまった。

 

という事はですよ、

今回の彼とは逆に、我々が

 

1.相手が発言している状況(背景)や相手の意図を考える

2.相手に自分が何を伝えたいのか、という自分の意図を考える

3.1と2を踏まえて発言する

 

という事をしていけば、今回のように、多くの人を悲しませるような事は減っていくのではないでしょうか。

 

今回の出来事をただの「人間性が狂ったバカな政治家の問題行動」と怒りや落胆の感情で終わらせるだけではなく、自分の成長に活かしていく。

自分や周りの人を笑顔にできるように活かしていく。

それが我々が大西議員から学ぶべき事だと僕は思うのです。

 

 

最後に大西議員に伝えたい事

最後に、もし万が一何かの偶然、神の奇跡が起こって大西議員がこの記事を読んでくれていたら、一言だけ伝えたい事があります。

 

あなたは自分のサイトの「経歴」のページで、こう書いていますよね。

 

昭和42年

志をたて、寝る間も惜しく活動していた学生時代

大西議員サイトより抜粋)

 

あなたはこの時、どんな志を立てていたのでしょうか?

今、その志はどうなっているのでしょうか?

今のあなた自身、そしてあなたの周りの状況は、あなたが望んでいるものでしょうか?

もしそうでなければ、あなたは本当は何を望んでいるのでしょうか?

 

あなたを責めている訳ではない。

ただ是非一度、考えてみて欲しいのです。

 

今回の一件を、政治家として成長のきっかけにできるかどうか。

人を怒らせる事しかできない政治屋で終わるのか、人を笑顔にする政治家になれるのか。

それは今後のあなた次第なのです。

 

 

阿部 龍太

 

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