「好きを仕事に」が上手くいかない3つの理由 〜「いのちの言葉」〜

「ライフデザイン」科

偉大な先人達から学ぶ「いのちの言葉」

このコーナーについては「こちら」からどうぞ。

 

【新コーナー】偉大な先人達から学ぶ「いのちの言葉」 〜「情熱が持てない」というあなたへ 〜
「人の身体は、食べたものでできている」 とよく言われます。 間違いとは言いません。 でも僕は、これには100%同意できない。 「人はパンのみにて生くる者にあらず。 神の口から出る一つ一つの言...

 

さて、今回あなたにお伝えしたい「いのちの言葉」はこちらです。

 

(「プロフェッショナルとは?」という問いに対して)

「愛です」

内村航平(体操選手)

 

オリンピック2大会連続(ロンドン・リオ)での個人総合金メダル。

世界選手権での19個のメダル(金10、銀5、銅4)

 

まさに世界トップのジムナスト。

その恐るべきパフォーマンスの根底にあるもの。

 

それがこの「愛」でした。

 

この言葉の後、彼はこう続けています。

 

体操やってて辛い事ばっかりなんですけど、いい事悪い事ひっくるめて…大好きって言うか…大好きじゃおさまらないんですよね。

だから愛なんですよ。

 

辛い事はある。苦しい事はある。

いい事ばかりではない。

 

それでもやりたいと思う。

やらずにはいられない。

 

その気持ちを内村選手は「愛」と表現しました。

 

約10年、世界のトップで戦い、結果を出している彼のこの姿勢から、我々一般人は学ぶべき点が多いと思うのです。

 

 

「好きを仕事に」で上手くいく人、いかない人

多くの人の心を騒がせるこのキーワードですが、実際に「好きを仕事に」した人で上手くいっている人とそうでない人に分かれるようです。

 

過去のクライアントさんや、ビジネススクールで講師をさせて頂いた時の受講生さん、今まで数百人の方とお話させていただいていますが、その中で「好きな事」で独立を果たし、今もうまくいっている人が何人かおられます。

 

特にスクールならば、同じ事を学んでいたはずです。

なのに、ある人は「好きを仕事に」して上手くいき、別のある人は上手くいかない。

その違いが、まさに内村選手の言う「愛」にあったのです。

 

上手くいっている人の「愛」を分析してみた所、全ての人にこのような点が見られました。

 

1.頑張っていない

2.対象が広い

3.きちんと受け容れ、きちんと選択する

 

具体的に説明しましょう。

 

 

「愛」その1.頑張っていない

愛がある人ほど頑張っていません。

苦しむ事はゼロではないけれど、でもそれを「当然の事」として受け容れて、それを乗り越えるために必要な事を粛々と行っています。

「我慢」とか「努力」とか「頑張る」という意識が本当に少ないのです。

 

例えば内村選手は、その練習量の多さ(1日5時間・週5回)が有名です。

僕のような凡人から見たら、本当に凄い努力だと思います。

でもそれは彼にとっては最早「当たり前」の事なのです。

 

本人に聞いた訳ではないので推測ではありますが、彼は

「練習嫌だなあ。面倒だなあ。やりたくないなあ」

と思いながら練習をしていないと僕は考えています。

 

だって、上手くなりたいから。

最高の技を披露したいから。

世界の最高の舞台に立ちたいから。

 

そのために「必要な事」なのだから、ただそれをやる。

それだけの話なのです。

 

僕の周りにいる「好きを仕事に」して上手くいっている人もやはりこの要素は皆持っています。

「我慢」して「頑張る」のではない。

やるべき事、当たり前の事であり、苦しいという意識がない。

 

そういう意味で、彼らは「頑張っていない」のです。

 

 

「愛」その2.対象が広い

これは「何を愛するか」という「視点の広さ」です。

いくら自分のやっている事を愛していても、努力が当たり前だったとしても

 

自分だけを愛している状態

 

では、望む成果がついてくる事は難しいでしょう。

 

商売で言うのであれば「自分の商品やサービス」を愛している「だけ」では不十分だという事です。

それに加えて「自分の商品やサービスを使ってくれるお客様」にも愛を注ぐ。

お客様の苦しみや悩みをできる限り理解し、そして共感し、更には解決のために力を注ぐ。

 

「自分(の扱っている商品やサービス)」への愛

お客様となる「他者」への愛

 

が最低限必要だ、という事です。

 

さらに言うのであれば、これらに加えて

 

我々が生きるこの「世界」への愛

 

も追加すべきだと個人的には考えています。

 

仮に売上が上がったとしても、例えば環境破壊がどんどん進んでしまったり、お客様の知的水準を下げてしまったりするようでは、今だけ良かったとしても未来は厳しいものになってしまいます。

残念ながら、今やそういう商売しかできなくなっている企業が少なくありません。

 

自分さえ良ければいい、未来などどうなっても構わない。

そういう「浅く、薄い視点」から早く抜け出してください。

そのための土台がこのふたつ目の「愛」です。

 

 

「愛」その3.きちんと受け容れ、きちんと選択する

これは「その1」とも繋がるものなのですが「苦しい事や辛い事」があった場合はそれを無視しない。

「苦しい事は苦しい、辛い事は辛い」と「現状」を「きちんと受け容れる」。

その上で、自分にとって何が大切なのか。自分が愛しているものは何なのか、について考え、自分の大切な物を大切にできる行動をする。

 

要は

 

「優先順位をきちんとつけましょう」

 

とも言える訳です。

 

ベタな例ですが、家族のために仕事に打ち込んでしまうあまり、家族の心が離れてしまう。

「頑張っているのに、大切なものが離れて行ってしまう」

そんな悲しいことが起こってしまうのは

 

「大切なものを大切にしていない」

 

からです。

家族を大切にしたいのであれば、仕事を頑張る事は必要かもしれませんが、それ以外にも大切にするべき事があるはずです。

 

例えば内村選手は以前、偏食で有名でした。

野菜は一切食べず、チョコレートが大好き(北京五輪の時のブラックサンダーは有名でしたよね)

でも最近は、食生活の改善に取り組んでいるそうです。

 

野菜を食べたり、チョコレートを断つ事は、内村選手にとって「好きな事」ではないでしょう。

でも彼は「体操」を「愛して」いる。

野菜やチョコレートよりも、愛する体操を高いレベルで続けられる事の方が彼にとっては大切な事だった。

だから彼は、食事制限をした。

 

自分にとって大切なものを大切にする。

そのために必要な事をする。

だから欲しいものを手に入れられる。

 

こういう風に言われてみれば当たり前だと思うのですが、驚くほど多くの人ができていない。

 

きちんと受け容れられていない。

きちんと選択できていない。

 

であれば、欲しいものがやってくる訳もありません。

何の捻りもありません。

当然の事なのです。

 

 

最後に「愛」は勝つ?

2017年の世界選手権で怪我をし、途中棄権をした内村選手。

その後の全日本選手権(2018年4月)では3位。

 

谷川翔選手(19歳)や白井健三選手(21歳)といった素晴らしい若手選手の台頭。

「内村選手の時代は終わった」

そんな事を考えた人もいたかもしれない。

 

しかし1ヶ月後のNHK杯(2018年5月)での逆転優勝。

29歳の内村選手はまだ終わっていませんでした。

 

彼の体操への「愛の体現」。

それが結果となって現れた瞬間でした。

 

最後に「愛は勝つ」

…と一言で言うのは乱暴かもしれませんが、この「愛の体現」つまり

「愛を言動で表現する事」

は世の「偉業」と呼ばれる全ての原点にあるものです。

 

内村選手の偉業に、あなたが続く事を祈っています。

あなたの中にある「愛」を是非、体現してください。

 

 

阿部 龍太

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