前回の記事で、
羽生善治さん(将棋・永世七冠)の強さの理由から学ぶ、我々が商売で成功するために必要な事
について考えてみました。
【参考記事】
【祝!永世七冠】羽生善治さんに学ぶブランディングの3つのコツ
忙しくて読む時間のないあなたのためにひとことで言うのであれば、
「己を貫く勇気を踏まえた柔軟性と多面的な思考、それが鍵なのだ」
という話です。
で、前回は3つのうち2つを話して終わったので、今回は最後の一つをお伝えしようと思います。
個人的には、前回お伝えした2つの土台になるものだと考えているものです。
では、いってみましょう!
勝ち続けられる理由その3:「3方向の」愛
羽生さんが30年以上勝ち続けられ、そして前人未到の記録を出し続けられている理由。
それはこの
「3方向の」愛
ではないか、と個人的には思うのです。
もうすでにお分かりかもしれませんが、この
「3方向」
というのがポイントな訳です。
その3つとは
・自分への愛
・他者への愛
・将棋への愛
というものです。
つまり、自分を、他者を、将棋を、大切にしている、という事です。
もう少し、具体的に説明していきましょう。
愛その1:自分への愛
羽生さんの言葉を追っていくと
「健全(不健全)」
という言葉が良く出てきます。
目先の勝ち負けに囚われず、長い目で見た時にプラスになるかどうか、次に繋がるものかどうか。
それが彼が重視している「健全さ」というものです。
そして彼はこの「健全さ」というものについてこう言っています。
健全とは、要するに自然に続けられることだ。
そうでないのは、やはり不健全で、無理がある。どこか歪みがある。
短い時間のことならいいが、長くは続かない。
『直感力(PHP新書)』より抜粋
自分にとっての「自然さ」を大切にする事。
それが彼が重視している「自分への愛」というものです。
彼は、こうも言っています。
棋士、勝負師として大切なことは、意外と思われるかもしれないが無理をしないことにある。
『直感力(PHP新書)』より抜粋
羽生さんは「棋士、勝負師として大切なこと」と言っていますが、これはそれ以外の人達にも通じる事だと僕は考えます。
ここで僕が言う「無理」とは、己のパフォーマンスを下げる要因となるものです。
(多分ですが羽生さんも同じような意味で使っていると思います)
努力する事を否定するつもりは全くありませんが、それによって集中力が乱れたり、体調を崩してしまっては本末転倒ですよね?
ブラック企業で疲弊してしまう人がいるのも、こういう「無理」をしてしまっているからではないかと思うのです。
何度も言いますが、努力する事を否定するつもりはありません。
でもそれは「正しい努力」であるべきだ、というのが僕の意見です。
何かを目的とした時、そのための「正しくない努力」を、どれだけ積み上げたとしても、その目的は得られません。
野球を上達させるためにはそのための「正しい努力」が
サッカーを上達させるためにはそのための「正しい努力」が
ラグビーを上達させるためにはそのための「正しい努力」が
それぞれ存在します。
当たり前ですが、毎日素振りを1000回やったとしても、ほぼ100%の確率でJリーグでゴールを決められません。
同時に、毎日フリーキックの練習を1000回やったとしても、ほぼ100%の確率でトップリーグでトライを決める事はできません。
そして、毎日タックルの練習を1000回やったとしても、ほぼ100%の確率でプロ野球選手でホームランを打てないでしょう。
こう例であれば恐らく100%の人が「そりゃ当然だ」と言うでしょうが、これが商売の舞台になるとびっくりするくらい「正しくない努力」をしてしまう人が増えてしまう。
だからこそ、得たいものを得られなくなってしまうのです。
何かを得るためには、そのための「正しい努力」を積み重ねる事が必要なのです。
羽生さんもこう言っています。
ひたすらストイックに生きる、というのとは違う。
自分の目指すところを無理せず続けるために、その目的にもその他のことにも、余計な力を入れすぎないようにしていくのだ。
『直感力(PHP新書)』より抜粋
目指すもののために、無理をするのではなく、自分が自然に出来る事にただ集中する。
それが「自分に対する愛」ではないでしょうか?
言うは易し、行うは難しですが、だからこそ挑戦する価値があるものである、僕はそう思うのです。
あなたにとっての「正しい努力」は何でしょうか?
愛その2:他者への愛
将棋には、必ず「対戦相手」が存在します。
羽生さんはその「対戦相手」を非常に重視している。
彼の言葉を集めているとそれに気付かされます。
羽生伝説で有名なのが
「相手が悪手を指すと不機嫌になる」
というものです。
相手がミスをしたら自分のチャンスになる訳です。
なのに羽生さんは不機嫌になる。
それについて羽生さんは
相手でも自分でも、どちらかが悪い手を指すと、もっとすごいものを作り出せそうなチャンスがなくなってしまった、ということですから。
『シリコンバレーから将棋を観る(中央公論新社)』より抜粋
向かい合う二人でいかに美しい局面を生み出していくかー
ーそれが将棋の醍醐味であり、直感を磨くための道筋であると思っている。
『直感力(PHP新書)』より抜粋
と語っています。
つまり、彼にとって将棋とは、
「単なる勝負」の場
というだけではなく、
「二人で何かを創り出す」場
でもあるのです。
これは完全に商売にも当てはまるものだというのが僕の意見です。
商売には必ず
「提供する人(売る側)」
と
「受け取る人(買う側)」
という異なるふたつの立場の人が存在します。
当然ですが、買う側が嫌な思いをするのであれば、その商売は発展せず、消えてしまう訳です。
ですから売る側は、買う側に喜ばれる商売を築く必要があるのです。
(そういう意味で僕は「売る」とか「儲かる」とか「稼ぐ」という言葉遣いには違和感を感じます。「買ってもらう」という言葉の方がしっくりくるんですよね)
とは言え、買う側だけが喜んで、売る側がキツくなってしまうのであれば、それはそれでその商売は発展せず、消えてしまう訳です。
僕は「互いに喜び合う」という事を今後の時代の「商売の成功」の為の手段の一つとして提唱していますが、まさに羽生さんはこの点について話してくれていると(勝手に)認識しています。
互いに喜び合う事、それは、売る側だけ、一方向からの働きかけだけでは成立しません。
売る側からも、買う側からも、双方からの働きかけによって成立するものです。
これについては、今やお笑い芸人、絵本作家、実業家としても名高い西野亮廣さんも「セカンドクリエイター」という表現で、似たような事を伝えてくれています。
街を歩いていて、面白い看板があれば撮影してInstagramにアップする。
気になったニュースがあればコメントし、不特定多数の人に自分の意思を表明する。
これらはプロのカメラマンの仕業でも、プロのコメンテーターの仕業でもなく、一般の方々の仕業で、ご覧のとおり今は国民総クリエイター時代だ。
それを生業としているかどうかはさておき、国民一人一人が情報を発信するようになった。
この国には、クリエイター(仕事で情報を発信する人)とセカンドクリエイター(趣味で情報を発信する人)しかいない。
つまり、《純粋な(受け止めるだけの)お客さん》なんて、ほぼほぼ絶滅したわけだ。
(彼の本はとても勉強になるものなので、近々まとめてみたいと思っています。西野さんありがとうございます!)
西野さんは
「お客さんという存在の人と、一緒に創った方が売れるし、その方が楽しくないですか?」
という事を我々に伝えてくれています。
これは羽生さんの考えとも通じるものだと個人的には思うのです。
あなたの商売で、お客様と一緒になって創り出せるものはありませんか?
愛その3:将棋への愛
これまで色々言ってきましたが、羽生さんの強さの理由をつきつめると
将棋が好き
これに尽きるのだと思います。
羽生さんは小学校1年生の時に初めて将棋に触れたそうですが、始めてから2ヶ月以上、全く勝てなかったそうです。
それでも嫌にならず続けられたのは、彼曰く
悔しいとは思ったけれど、それ以上に楽しかったのだ。
『直感力(PHP新書)』より抜粋
という感覚があったからなのだとか。
周りの大人の理解や工夫(将棋道場の席主の方の工夫が実はとても参考になります)、そして本人の適正によって、
「楽しさ」
を感じられ、そしてそれが
「意欲」
を生み、そしてそれが
「成長」
へと繋がる訳です。
プロフィールでもお伝えしているように、僕自身も両親に百科事典を買ってもらい、それを破れるまで読んだ事が、今のこの仕事にも役立っている部分が確実にあります。
決して裕福とは言えなかった中で、子供にそれだけの投資をしてくれた両親には本当に感謝しかありません。
羽生さんや僕のように、自分自身や周りの人が「楽しさ」を感じられるような事を、どんな小さな事でもいい、是非取り組んでみてほしいのです。
それによって「意欲」が、そして「成長」がついてきますから。
「楽しさ」を感じられるために、何ができるでしょうか?
「あなたは、自分の仕事が好きですか?」
もしこの問いに、あなたが胸を張って「YES」と即答出来るのであれば、上でお伝えした
「正しい努力」
をする事で、あなたは必ず商売で成功出来ます。
僕の過去のクライアントさんで、
・出版を実現させ、ベストセラー作家となったコンサルタントさん
・世界中で個展やイベントを開催しているアーティストさん
・店舗もネットショップも何も無い状態でスタートさせて1週間もしないうちに売上が上がった職人さん
・1ヶ月で売上が3倍以上になったセラピストさん
といった方がおられますが、この方々は、上記の僕の質問に即答されていました。
しかも、どちらかと言えば食い気味に(笑)
言ってしまうと、「売上を上げる」だけなら、好きじゃなくてもいいんですよ。
売上を上げるだけの目的なら、愛なんて無くてもいいんですよ。
それで非常に高い売上を出している人や企業は、山ほどいます。
過去のクライアントさんにもそういう人はいました(プロフィールにも書いてあります)
つい先日も、過去のセクハラやパワハラを告発されたある業界の超有名人がいました。
彼はその業界では本当に能力の高い人です。売上も恐らく滅茶苦茶出しているでしょう。
でも、あくまでも僕自身の感覚ですが、それの何が「幸せ」なのかが分からない。
それの何が楽しいのかが分からないのです。
まあ多分彼らと比べて僕はバカなのでしょうね(笑)
自分自身も、お客様も、大切にする。
それをするからこそ売上は上がるし、お客さんも、自分も、関わる人が幸せになれるのではないか。
それが僕がこの世界に伝えていくテーマです。
もしあなたが、売上以外にも興味があるのであれば、是非羽生さんの強さの理由を参考にしてください。
楽しさをベースに、意欲を持ち、己の特性を活かしながら柔軟に変化し続け、勝ち続けてください。
あなたとあなたの大切な人と喜び合ってください。
応援しています。
阿部 龍太
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