57→23
マイナス34
約59.6%減
7月2日に行われた東京都議選で、自民党が大きく議席を減らしました。
それに対して、関係者の方や色々な方が、色々な事を話しているのですが、個人的に少し思う事がありまして。
と言うのも、今回の自民党の大敗は、
「ブランディング」
という観点で参考になる要素があるからです。
もう少し具体的に言うと、
彼らにはブランディングというものについて、
「ある視点」
が欠けていた。
という事です。
この「視点」とは、政治の世界だけではなく、商売にも、つまり人間が関わる事すべてにおける「基礎」とも言えるものです。
なのに、多くの人が忘れてしまっている。
その事について、今回お伝えしようと思います。
ちなみに自民党を貶めるといった、そういう低レベルな事をするつもりはありません。
なぜならば、今回お伝えする
「視点の欠如」
は、自民党以外の全ての政党にも同じ事が言えるからです。
つまり、自民党だけではなく、全ての政党にこの視点が欠如している。
ブランディングというものについてまったく考えていない。個人的にはそうとしか思えません。
もし他の政党がまともなブランディングをしていたら、今回の自民党の議席はこんなものでは済まなかったでしょう。
その意味では今回の自民党はラッキーだったとも言えます。
もちろん、政党だけの話ではありません。
商売においてもこの「視点」の重要性は同様です。
すべての政党の方に、そしてすべての商売人に、考えていただきたい。
そんな内容ですので、よろしければ、お付き合いください。
ブランドデザインの視点で考える、自民党の支持率低下
このブログを読んでくださっているあなたならばもうお分かりの通り、「欠けている視点」を一言で言うならば
ブランドデザインの視点
というものになります。
そして、このブランドデザインにおいて、絶対に忘れてはいけない基礎のひとつとして、
「二面規定」
というものがあります。
具体的に言うと「ブランド」とは
「自分とは●●●である」という「自己規定」
と
「あの人は◎◎◎である」という「他者規定」
の両方の側面がある、という事です。
と、言われてもよく分からないと思いますので、実際にあった出来事を例にお話しします。
What is my name ?
大学の卒業を記念して、ヨーロッパを一人旅しました。
イタリア、スペイン、フランス、約1ヶ月の貧乏旅行。
一番長く滞在したのがスペインのバルセロナで、確か1週間くらい滞在したと思います。
その時の出来事です。
宿泊していたユースホステルで、居合わせた人達と話をしていた時。
初対面なので、自己紹介で名前や出身国を言う訳ですよ。
そして何人かが話した後、僕の番がやってきました。
初めての海外、さらには一人旅。
最初は少し寂しかったものの、そんな状況にも少し慣れ、旅の楽しさを感じるようになっていた龍太少年は、辞書を片手に
My name is “Ryuta Abe”
Me llamo “Ryuta Abe”
(僕の名前は阿部龍太です)
とドキドキしながら伝えました。
誰も知り合いのいない異国の地で、少しでも仲良くなってもらいたい。名前のひとつでも覚えて帰ってもらいたい。
そう思っていた龍太少年ですが、その後のあるスペイン人男性の一言で全てがひっくり返る事になった訳です。
「リュータ?え?日本人?その顔で?(笑)ウソだろ?どう見てもお前の顔は”ロドリゲス”って顔だぜ」
(辞書を引きながら聞いていたので正確ではありませんが、こんなニュアンスだったと思います)
彼のその一言で、僕はバルセロナ滞在中
「ロドリゲス」
と呼ばれる事になりました。
そしてその結果、次の日から、違う部屋の全く知らない人にも
「Hola, Rodríguez!」
(こんにちは、ロドリゲス!)
とにこやかに声をかけられる始末。
まあ確かにあの時の僕の顔や髪型や服装を見ればそう言われても仕方ないと思うのですが・・・(笑)
ロドリゲスが教えてくれた事
とまあロドリゲス、いや龍太少年のドキドキ放浪記はこれくらいにして、僕が伝えたいのは
「自分が自分自身に対して持っている自己規定」
と
「他者がその人に対して持っている他者規定」
が食い違った場合、数の多さと声の大きさで勝負が決まる。
すなわち、多くの場合は後者が勝つ事になる。
という事です。
違う言い方をすると
ブランドとは、相手が作り上げた主観的なイメージであり、自分自身の持つイメージと異なってしまう場合がある。
とも言い換えられます。
自己規定と他者規定という二つのイメージ、これらを意図的に近づけるようにする行為
それがブランディングというものであるとも言える訳です。
かのドラッカーが
「何によって覚えられたいか」
(『非営利組織の経営』より抜粋)
の重要性について伝えてくれていますが、これは
「自己規定」と「他者規定」のバランス
の上に成り立つものであり、どちらかだけでは「きちんと覚えてもらえない」と思うのです。
僕の名前は
「阿部龍太」
といいます。
戸籍にもそう記されていますので、間違いないはずです。
でもバルセロナでは、知り合った人も、知らない人もほとんど皆、僕の事を
「ロドリゲス」
と呼んでいましたし、それでコミュニケーションが成立していた。
全然知らない人から
「おいロドリゲス、歌舞伎のフェイスペインティングしてくれよ」
と頼まれた事がありましたが、その裏には
Aさん「ロドリゲス、日本から来たらしいよ」
Bさん「マジで?じゃあ歌舞伎知ってるよね」
というやり取りがあったのだそうです。
(ちなみにその時はデーモン閣下のペインティングをさせていただきました・笑)
つまり、僕自身とのやり取りだけではなく、僕の知らない所でも
阿部龍太→ロドリゲス
という世界が形成されていたんです(笑)
僕自身がいくら「違う、そうじゃない」と鈴木雅之さんばりに声をからして叫んでも(いや別に叫んでないけど)、少なくともあのユースホステルに泊まっていた彼らにとっては僕は
「阿部龍太」
ではなく
「ロドリゲス」
だった。
つまり、
自己規定(僕の名前は阿部龍太)
と
他者規定(あいつの名前はロドリゲス)
というズレがあり、そして多数派のロドリゲスが勝ってしまったという事なのです(僕も否定しなかったし)
さて、これが、今回自民党(を含むほぼ全ての政党)に欠けていた「ブランドデザインの視点」というものになります。
つまり
「自分たちが捉えていた党のイメージ」
と
「”多くの”有権者たちが捉えていた党のイメージ」
にズレがあった。
そしてそのズレ、つまり一般の有権者たちがどんなイメージを自民党に持っているのか、党関係者当人が気付いていなかった。
(もしくは気付いていても対策を怠っていた)
その結果、自分たちの想像以上に支持(議席)が下がってしまった。
という事なのです。
ローマもブランドも一日にして成らず
開票後の会見で、自民党の下村博文都連会長が、選挙期間中に週刊誌に政治資金問題を書かれた事が、今回の大敗の要因になってしまったという話をしたそうです。
しかしこれは、大敗の理由としては半分正しく、半分間違っていると僕は考えます。
なぜなら、ローマと同じく、ブランディングも一日にして成らないものだから。
つまり、この資金問題の以前、日頃から形成されたイメージが既に明確になっており、この資金問題は最早、だめ押しのひとつとなったに過ぎないという事です。
「資金問題は確かにイメージダウンだけど、でもイメージ悪いのってもうずっと前からの話だよね?やっぱり自民党ってそういう事する人の集まりなんだね」
という
「ある種の確認事項」
に過ぎなかったという訳なのです。
例えば、
審議中に病気に苦しむ人に対する誤解を招く発言をしたり
秘書の薄毛を罵ったり
選挙中に問題発言をしたり
・・・
それ以外にも最近の法改正や諸々の疑惑に対する強硬な姿勢もありました。
こういったひとつひとつの言動の積み重ねが、個々の有権者の心の中に少しずつ「ネガティブなブランドイメージ」を形作っていった。
しかも、党の関係者本人たちが思っていた以上に深刻なレベルで、形作られてしまったのです。
もちろん都政と国政は本来別物であり、ゆえに
国会議員の醜聞や疑惑=自民党はダメ=都政は任せられない
という考えは少し違うようにも思うのですが「自民党」という共通の枠がある限り、有権者にとっては無関係にはならないでしょう。
実際にある党の偉い方は、都議選の応援演説なのにも関わらず今の内閣批判を中心に話をしていました。
そしてその党は結果として、今回の都議選で議席を増やしています。
有権者がバカなんだ、という意見はあるでしょうし、それを否定するつもりはありませんが、ただ有権者をそんな風にしているのは政治家の側にも一因はあると思うのです。
ってちょっと話逸れちゃいましたね。
このネガティブなブランドイメージが形作られた原因のひとつとして
「メディアが偏った報道をする」
という一側面もあったでしょう。
(これに関しても色々思う所はあるのですが、またいつか別の機会に)
確かにメディアは場面の一部だけを切り取って、あたかもそれが全てだというような見せ方をする事があります。
言ってもない事を「言った」とされるような事がある訳です。
ならば、その対策のためにすべき事、出来る事はいくつもあったはず。
彼らの知識や経験、そしてインターネットのようなツールを活用すれば、色々な事ができたはずです。
なのに彼らは(少なくとも表面に見える形では)ほとんど対策をとらなかった。
己を顧みて律する事も、対外的に対策をとる事もしなかった。
その結果、
内部、つまり自民党関係者
と
外部、つまり一般有権者
の
自民党に対するイメージ
にズレが出てしまった。
そのズレに気付かず(もしくは気付いていても対策をせず)放置してしまった。
それが今回の結果を招くひとつの要因となった。
・・・というのが「ブランドデザイン」という視点で見た、今回の自民党の大敗の根本的な理由です。
(細かい部分は他にもたくさんありますが、この根本を無視しては多分何やっても無駄だと思います)
もちろん、見えない所で国のために一所懸命頑張っていた部分は当然あると思うのです。
暴言吐いて、有権者(の中の有力者)に頭下げて、マスコミには適当な事言って、国会審議で居眠りしてれば成り立ってしまう。選挙の時だけ作り笑いして頭を下げておけばいい。
政治家という仕事がそんな低俗で矮小で情けないものではないのは僕ですら知っています。
もし政治の世界に、そんな低俗で矮小で情けない輩しかいないのであれば、既にこの国は終わっているはずです。
(僕はまだこの国は終わっていないと思っています)
さらに政権与党であるからには、それに相当する激務に耐えて頑張られていたのは想像がつきます。
しかし、そういう部分は表に出ず、国をダメにするような部分ばかりが表に出てしまった。
しかもインターネットニュースやSNSによって、ニュースの拡散・浸透のレベルは以前とは比べ物にならない。
そのため、党関係者が知らないうちに
「自民党に対する嫌悪感」
がどんどん大きくなってしまったのではないかと思うのです。
これは、自民党に限った話でも、選挙に限った話でもない。
そして、冒頭でもお伝えしたように、これは何も自民党に限った話ではありません。
民進党は元々少ない議席を更に減らしていますし、他の政党も都民ファースト以外は議席を減らしこそすれ、増やせている政党ほとんどありません。
ちなみに大勝した都民ファーストですが、ブランディングがきちんとされていたというよりは、自民党を始め他の政党の勝手な自滅による
「”漁父の利”的な要素」
の方が大きいように個人的には思います。
つまり今回の躍進はあくまでも「敵の敵は味方」といった、一時的なイメージアップに過ぎないものであり、今後の都政の動きによっては一気にイメージダウンしてしまう可能性もあるという訳です。
冒頭で
「むしろ自民党はラッキーだった」
と言いましたが、他の政党もブランディングがグダグダで、議席がほとんど変わらなかったため、自民党はあの程度の減少で済んだと思うのです。
更に言えば今回のこの話、選挙に限った話ではありません。
政治に直接関係ないお仕事や立場のあなた自身にも大いに関係がある話です。
例えば、クライアントさんの話を伺っていると
「●●だから私はダメなんです」
「△△だから私にはムリです」
というような事を聞く事が少なくありません。
でも、本当にそうなのでしょうか?
その人自身の勝手な思い込みという「自己規定」を含んではいないでしょうか?
周りはそんな事思っていないのに、自分で勝手に自分の可能性を閉ざしてしまっていないでしょうか?
100万歩譲って、仮にその「自己規定」が事実だったとしても、これからそれを改善していけばいいのです。
時間はかかるかもしれないけれど、きちんとした方法、僕がよく言う
「正しい努力」
をしていれば、必ず変わってきます。
もしよければ、あなたも一度考えてみてください。
そして是非、あなたの持つ可能性を開化させていってください。
そして自民党を始め、政党関係者の方々、今回をいい機会にしてください。
あなたたちはこの国のために頑張ってくれている。
どこかの国や特定の誰かの利益ではなく、この国、この国で生きる人のために日夜頑張っておられる。
そうですよね?
であれば今回の事を是非次に繋げていってください。
内面の直すべき点は直すようにし、そして外に向けて伝えるべき点は伝えていってください。
あなたたちの「国を良くしよう」という想いを是非明確に伝えていってください。
この国と、そしてこの国に生きる人のために頑張ってくれているあなたたちを僕は心から誇りに思っています。
阿部 龍太
コメント
とても分かりやすく理解しました。
ありがとうございました。
小島さん、コメントありがとうございます。
お役に立てたようで嬉しいです。
「二つの視点」を持てるようになると、世界が大きく広がります。
是非意識してみてください。
ありがとうございました!